高血圧は、放置すると脳卒中や心臓病などのリスクを高める、怖い病気です。
しかし、食事の内容を見直すことで、血圧をコントロールできる可能性があることをご存知ですか?
世界中で注目されている「DASH食」は、高血圧の予防・改善に効果が期待できる食事法です。
この記事では、DASH食の効果やメカニズム、そして最新の研究結果を、科学的な根拠に基づいて分かりやすく解説していきます。
DASH食で、健康的な毎日を手に入れましょう!
DASH食ダイエットとは?
DASH食とは、「Dietary Approaches to Stop Hypertension」の略で、日本語では「高血圧を止めるための食事療法」という意味です。その名の通り、高血圧の治療を目的として、アメリカ国立心肺血液研究所によって開発されました [1]。
DASH食は、果物、野菜、全粒穀物、低脂肪乳製品を豊富に摂取し、飽和脂肪酸、コレステロール、ナトリウムを制限する食事パターンです。
従来の減塩食に加えて、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルを積極的に摂取することが特徴です。
近年では、高血圧だけでなく、心臓病、脳卒中、糖尿病、腎臓病、そして一部の癌のリスクを減らす効果も期待されています [2]。
DASH食ダイエットで期待できる効果
DASH食ダイエットは、様々な健康効果が期待できます。
- 高血圧への効果: DASH食は、血圧を下げる効果が非常に高いことが多くの研究で示されています。
例えば、ある研究では、高血圧の参加者が8週間DASH食を継続した結果、収縮期血圧が平均11.4 mmHg、拡張期血圧が平均5.5 mmHg低下したという結果が出ています [3]。
DASH食は、ナトリウムを制限するだけでなく、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルを豊富に摂取することで、血圧を効果的に下げるのに役立ちます。 - 減量効果: DASH食は、カロリー制限をせずとも、健康的な体重減量をサポートしてくれる可能性があります。
これは、DASH食が、満腹感をもたらしやすく、間食を減らすのに役立つためと考えられています。
また、DASH食は、体内の水分バランスを調整し、むくみを解消する効果も期待できます。 - その他の健康効果: DASH食は、以下のような様々な健康効果も期待されています。
- 心臓病予防: DASH食は、コレステロール値を改善し、心臓病のリスクを減らすのに役立ちます [4]。
- 脳卒中予防: DASH食は、脳卒中のリスクを減らす効果も期待されています [5]。
- 糖尿病予防: DASH食は、血糖値をコントロールし、糖尿病のリスクを減らすのに役立ちます [6]。
- 腎臓病予防: DASH食は、腎臓病のリスクを減らす効果も期待されています [7]。
- 癌予防: DASH食は、一部の癌(例えば、大腸癌、乳癌など)のリスクを減らすのに役立つ可能性も示唆されています [8]。
DASH食ダイエットのメカニズム
DASH食ダイエットが、なぜこれほど多くの健康効果をもたらすのでしょうか?
そのメカニズムを詳しく見ていきましょう。
ミネラルの働き
DASH食で積極的に摂取するカリウム、カルシウム、マグネシウムは、体内の水分バランスを調整し、血圧を下げるのに重要な役割を果たします。
- カリウムは、ナトリウムを体外に排出する働きがあり、血圧を下げる効果が期待できます。
- カルシウムは、血管の収縮を抑制し、血圧を安定させる効果があります。
- マグネシウムは、血管を拡張させ、血流を改善する効果があります。
食物繊維の力
DASH食で多く摂取する果物、野菜、全粒穀物には、食物繊維が豊富に含まれています。
- 食物繊維は、腸内環境を整え、コレステロール値を下げる効果があります。
- また、血糖値の上昇を抑制し、糖尿病予防にも役立ちます。
- さらに、満腹感をもたらしやすく、食べ過ぎを防ぐ効果も期待できます。
脂肪酸とコレステロール
DASH食では、飽和脂肪酸とコレステロールの摂取を制限します。
- 飽和脂肪酸は、悪玉コレステロールを増やし、動脈硬化のリスクを高めるため、摂取量を控える必要があります。
- コレステロールも、過剰に摂取すると動脈硬化のリスクを高めるため、注意が必要です。
ナトリウムの制限
- DASH食では、ナトリウム(塩分)の摂取を制限します。
- ナトリウムは、体内の水分を保持し、血圧を上昇させるため、高血圧の人は特に摂取量を控える必要があります。
DASH食ダイエットの安全性
DASH食ダイエットは、一般的に安全な食事療法と考えられていますが、いくつか注意点があります。
- 腎臓病の人: 腎臓病の人は、カリウムの排泄能力が低下しているため、DASH食で推奨されるカリウムの摂取量が多いと、高カリウム血症になる可能性があります。
- 腎臓病の人は、医師に相談の上、DASH食を行うようにしましょう。
- 薬との相互作用: 一部の薬(例えば、利尿剤、ACE阻害薬など)は、DASH食で推奨されるミネラルのバランスに影響を与える可能性があります。
- 薬を服用している人は、医師に相談の上、DASH食を行うようにしましょう。
- アレルギー: DASH食で推奨される食品の中には、アレルギーを引き起こす可能性のあるものもあります。
- 食物アレルギーがある人は、医師に相談の上、DASH食を行うようにしましょう。
DASH食ダイエットに関するよくある質問
- QDASH食ダイエットは誰でもできますか?
- A
はい、DASH食ダイエットは、基本的に誰でも行うことができます。
しかし、上記のような注意点もあるため、心配な人は医師に相談するようにしましょう。
- QDASH食ダイエットは、妊娠中でも大丈夫ですか?
- A
はい、DASH食ダイエットは、妊娠中でも行うことができます。
※妊娠中は、必要な栄養素が増えるため、医師や栄養士に相談しながら、DASH食を行うようにしましょう。
- QDASH食ダイエットは、お金がかかりますか?
- A
いいえ、DASH食ダイエットは、必ずしもお金がかかるわけではありません。
スーパーマーケットで手に入る食材を中心に、献立を工夫することで、経済的にDASH食ダイエットを行うことができます。
具体的なレシピや献立例については、こちらの記事をご覧ください。
参考文献
- National Heart, Lung, and Blood Institute. DASH eating plan. https://www.nhlbi.nih.gov/education/dash-eating-plan
- Appel LJ, Moore TJ, Obarzanek E, et al. A clinical trial of the effects of dietary patterns on blood pressure. N Engl J Med. 1997;336(16):1117-1124.
- Blumenthal JA, Babyak MA, Hinderliter AL, et al. Effects of the DASH diet alone and in combination with exercise and weight loss on blood pressure and cardiovascular biomarkers in men and women with high blood pressure: the ENCORE study. Arch Intern Med. 2010;170(2):126-135.
- Svetkey LP, Newby PK, Stevens VJ, et al. Effects of dietary patterns on blood pressure: subgroup analysis of the Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) randomized clinical trial. Arch Intern Med. 1999;159(3):285-293.
- He J, Whelton PK. Elevated systolic blood pressure and risk of cardiovascular and renal disease: overview of evidence from observational epidemiologic studies and randomized controlled trials. Am Heart J. 1999;138(3 Pt 2):S211-S219.
- Howard BV, Van Horn L, Hsia J, et al. The Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) diet and risk of developing type 2 diabetes mellitus: results from two prospective cohort studies. Am J Clin Nutr. 2006;84(6):1397-1406.
- Lin J, Fung TT, Hu FB, Curhan GC. Association of dietary patterns with albuminuria and kidney function decline in older white women: a subgroup analysis from the Nurses’ Health Study. Am J Kidney Dis. 2011;57(2):245-254.
- Fung TT, Hu FB, McCullough ML, et al. Dietary patterns and the risk of colorectal cancer in women. Am J Clin Nutr. 2005;81(6):1280-1289.