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「ダイエットを始めたいけど、空腹に耐えられない…」

そんな悩みをお持ちのあなたへ。実は、私たちの食欲は「グレリン」というホルモンに大きく左右されているのです。

グレリンは、胃から分泌されるホルモンで、食欲を増進させる働きがあります。ダイエット中は、グレリンの分泌量が増加しやすいため、空腹感に悩まされがちです。

しかし、グレリンの働きを理解し、分泌量をコントロールすることができれば、ダイエットを成功させることも夢ではありません。

この記事では、ダイエットの鍵を握るホルモン「グレリン」について、わかりやすく解説します。グレリンの働きや肥満との関係、分泌量を抑える方法などを理解し、効率的なダイエットを目指しましょう!

グレリンとは?

グレリンは、1999年に日本の研究者によって発見されたホルモンです。[1] 胃から分泌され、「空腹ホルモン」とも呼ばれています。

グレリンの働き

グレリンには、以下のような働きがあります。

  • 食欲を増進させる:グレリンは脳の視床下部に作用し、摂食中枢を刺激することで食欲を増進させます。[1]
  • 成長ホルモンの分泌を促進する:グレリンは脳の下垂体に作用し、成長ホルモンの分泌を促進します。成長ホルモンは、筋肉や骨の成長を促すだけでなく、脂肪の分解や代謝にも関わっています。[2]
  • 胃酸分泌を促進する:グレリンは胃に作用し、胃酸の分泌を促進することで消化を助けます。[3]
  • 胃の運動を促進する:グレリンは胃の運動を活発化させ、食べ物の消化を促進します。[4]
  • 血糖値を上昇させる:グレリンはインスリン分泌を抑制することで血糖値上昇に寄与します。[5] また、肝臓での糖新生を促進する可能性もあると考えられています。[12] インスリンは血糖値を下げるホルモンなので、その分泌が抑制されると血糖値が上昇します。糖新生とは、体内で糖を作り出す働きのことです。
  • 脂肪の蓄積を促進する:グレリンは脂肪細胞に作用し、脂肪の分解を抑制し、蓄積を促進します。[6]

グレリンと肥満の関係

グレリンは食欲を増進させるホルモンであるため、肥満と密接な関係があります。摂食障害の患者を対象とした研究では、グレリンの血中濃度が高いほど、BMIが高い傾向があることが示されています。[15]

グレリンの分泌量を増やす生活習慣

グレリンの分泌量を増やしてしまう生活習慣には、以下のようなものがあります。

  • 睡眠不足:睡眠不足はグレリンの分泌量を増加させ、食欲を増進させることが示唆されています。[8]
  • ストレス:ストレスを感じると、グレリンの分泌量が増加し、食欲が増進することが報告されています。[16] ストレスを感じると、副腎皮質からコルチゾールなどのストレスホルモンが分泌されます。これらのストレスホルモンは、視床下部-下垂体-副腎系 (HPA axis) を活性化し、グレリン分泌を促進すると考えられています。[17] また、ストレスは自律神経系にも影響を与え、交感神経の活動を亢進させることでグレリン分泌を増加させる可能性も指摘されています。[17]
  • 過度なダイエット:過度な食事制限は、グレリンの分泌量を増加させ、リバウンドのリスクを高める可能性があります。[9] これは、体が飢餓状態を感じ、エネルギーを蓄えようとするためです。
  • 高脂肪食の摂取:高脂肪食を継続的に摂取すると、グレリン分泌が増加し、食欲のコントロールが難しくなる可能性があります。[13] 特に、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を多く含む食品は、グレリン分泌を増加させる可能性が高いと言われています。
  • 果糖の摂取:果糖を多く含む食品の摂取は、グレリンの分泌量を増加させ、食欲を増進させる可能性があります。[10] 果糖は、ブドウ糖に比べてインスリン分泌を刺激しにくいため、グレリンの分泌抑制効果が弱いと考えられています。
  • 不規則な食事:食事の時間が不規則になると、グレリンの分泌リズムが乱れ、食欲のコントロールが難しくなる可能性があります。[11] グレリンの分泌は、通常、食事の前に増加し、食事の後に減少します。しかし、不規則な食事を続けると、このリズムが崩れ、常にグレリンの分泌量が多くなってしまう可能性があります。

グレリンをコントロールして食欲を抑える方法

グレリンの分泌量を抑え、食欲をコントロールするには、以下の方法が有効です。

  • 十分な睡眠をとる:毎日7時間以上の睡眠を心がけましょう。
  • ストレスを解消する:自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。
  • バランスの取れた食事をとる: protein、炭水化物、脂質をバランス良く摂取しましょう。特に、proteinはグレリンの分泌を抑える効果があると言われています。[14]
  • 規則正しい時間に食事をとる:毎日同じ時間に食事をとるように心がけましょう。
  • ゆっくりとよく噛んで食べる:よく噛んで食べることで、満腹感を得やすくなります。
  • 食物繊維を多く摂る:食物繊維、特にオリゴフルクトースは、胃の中で水分を吸収して膨らみ、満腹感を与えるとともに、グレリンの分泌を抑える効果も期待できます。[18]
  • 水分を十分に摂る:水分不足は、グレリンの分泌量を増加させる可能性があります。こまめな水分補給を心がけましょう。

まとめ

グレリンは食欲を増進させるホルモンであり、肥満と密接な関係があります。しかし、グレリンの働きを理解し、分泌量をコントロールすることで、ダイエットを成功させることは可能です。

今回の記事を参考にして、グレリンと上手に付き合いながら、健康的なダイエットを目指しましょう

参考文献

  1. Kojima, M., et al. (1999). Ghrelin is a growth-hormone-releasing acylated peptide from stomach. Nature, 402(6762), 656-660.
  2. Date, Y., et al. (2000). Ghrelin, a novel growth hormone-releasing acylated peptide, is synthesized in a distinct endocrine cell type in the gastrointestinal tracts of rats and humans. Endocrinology, 141(11), 4255-4261.   
  3. Masuda, Y., et al. (2000). Ghrelin stimulates gastric acid secretion and motility in rats. Biochemical and biophysical research communications, 276(3), 905-908.   
  4. Tack, J., et al. (2006). Influence of ghrelin on gastric emptying and meal-related symptoms in idiopathic gastroparesis. Alimentary pharmacology & therapeutics, 23(1), 89-98.   
  5. Broglio, F., et al. (2001). Ghrelin, a natural GH secretagogue produced by the stomach, induces hyperglycemia and reduces insulin secretion in humans. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 86(10), 5083-5086.   
  6. Tschöp, M., Smiley, D. L., & Heiman, M. L. (2000). Ghrelin induces adiposity in rodents. Nature, 407(6806), 908-913.
  7. Spiegel, K., et al. (2004). Brief communication: Sleep curtailment in healthy young men is associated with decreased leptin levels, elevated ghrelin levels, and increased hunger and appetite. Annals of internal medicine, 141(11), 846-850.   
  8. Sumithran, P., et al. (2011). Long-term persistence of hormonal adaptations to weight loss. New England Journal of Medicine, 365(17), 1597-1604.   
  9. Teff, K. L., et al. (2004). Dietary fructose reduces circulating insulin and leptin, attenuates postprandial suppression of ghrelin, and increases triglycerides in women. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 89(6), 2963-2972.   
  10. Froy, O. (2010). Metabolism and circadian rhythms-implications for obesity. Endocrine reviews, 31(1), 1-24.
  11. Wang, L., et al. (2002). Glucoregulatory and metabolic effects of ghrelin administration in human subjects. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 87(6), 2530-2534.
  12. Thanthan, D., et al. (2012). High-fat diet-induced obesity is associated with decreased circulating ghrelin levels and increased expression of ghrelin O-acyltransferase in the gut. Endocrinology, 153(8), 3743-3752.
  13. Blouet, C., et al. (2008). Dietary protein modulates ghrelin and GLP-1 secretion in rats. Regulatory peptides, 151(1-3), 98-103.
  14. Engström, G., et al. (2003). Ghrelin levels in anorexia nervosa and bulimia nervosa: relationship to body mass index, eating disorder psychopathology and levels of other appetite-regulating hormones. Psychiatry research, 120(1), 1-9.
  15. Chuang, J. C., & Zigman, J. M. (2010). Ghrelin’s roles in stress, mood, and anxiety regulation. International journal of peptidomics, 2010.
  16. Schellekens, H., et al. (2010). Ghrelin and the central regulation of stress, mood, and anxiety. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 35(1), 1-17.
  17. Brennan, I. M., et al. (2012). Effects of fat, protein, and carbohydrate and protein load on appetite, plasma cholecystokinin, peptide YY, and ghrelin, and energy intake in lean and obese men. The American journal of clinical nutrition, 96(4), 767-775.  

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