PriGym | 【池袋】パーソナルジム
パレオダイエットの真実:旧石器時代の食生活は現代人に有効なのか?
ダイエットや健康に関心のある方なら、「パレオダイエット」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
旧石器時代の食生活を現代に蘇らせたという、ちょっとユニークなダイエット法ですよね。
原始人のようにたくましく、健康的な体になれるというイメージから、近年注目を集めています。
でも、本当に効果があるのでしょうか?
今回は、パレオダイエットのメリット・デメリット、そしてその実態について、詳しく解説していきます。
パレオダイエットとは?
パレオダイエットとは、約260万年前から約1万年前まで続いた旧石器時代の人々の食生活を模倣した食事法です。
当時の人々は、狩猟採集によって食料を得ていたため、肉、魚、野菜、果物、ナッツ類などを食べていました。
一方、穀物、砂糖、乳製品などは、農耕が始まった約1万年前以降に食生活に取り入れられたものです。
パレオダイエットでは、これらの食品を避けることを推奨しています。
なぜ注目されているの?
現代社会では、加工食品や精製された食品の摂取が増え、肥満や生活習慣病が深刻化しています。
これらの食品は、血糖値を急上昇させ、脂肪を蓄積しやすく、体に悪影響を及ぼす可能性があります。
パレオダイエットは、そうした現代の食生活の問題点を見直し、より自然な食生活(超加工食品を排除した食事)を送ることで、健康的な体を取り戻そうという考え方です。
パレオダイエットで期待される効果
パレオダイエットは、超加工食品や精製糖を排除し、食品の質を高めることに焦点を当てるため、いくつかの健康効果が期待されています。
いくつかの短期的な研究やメタ解析(Manheimer 2015, Ghaedi 2019)では、体重、胴囲、血圧、脂質プロファイル(中性脂肪など)の短期的な改善が示唆されています。
体重管理への寄与
パレオダイエットは、精製された炭水化物や砂糖を避けるため、血糖値の急激な上昇を抑える 傾向があります 。これにより、インスリンの分泌が 比較的安定し 、脂肪蓄積が 抑制される可能性 が考えられます。
また、タンパク質の摂取量が増えやすいため 満腹感が持続しやすく 、結果として総エネルギー摂取量が減少し、体重減少につながる可能性があります。
生活習慣病リスクへの影響
上記のような体重、血圧、脂質への短期的な好影響は、生活習慣病の予防に 役立つ可能性 があります。
ただし、これらの効果はパレオダイエット 特有 のものというより、総エネルギー摂取量の減少 や 食品の質の改善(超加工食品の排除) によってもたらされている可能性が高いと指摘されています。
パレオダイエットのやり方
パレオダイエットでは、食べて良いものと悪いものが明確に決まってしまいます。
基本的には、旧石器時代に食べられていたと考えられる自然な食品を摂取し、農耕以降に食生活に取り入れられた食品は避けるようにします。
食べて良いもの
- 肉類:牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉など
- 魚介類:マグロ、鮭、サバ、イワシなど
- 野菜:葉物野菜、根菜、きのこ類など
- 果物:リンゴ、バナナ、オレンジ、イチゴなど
- ナッツ類:アーモンド、クルミ、カシューナッツなど
- 卵:鶏卵、うずら卵など
- 良質な油:オリーブオイル、ココナッツオイルなど
食べてはいけないもの
- 穀物:米、小麦、パン、麺類など
- 砂糖:白砂糖、黒砂糖、人工甘味料など(超加工食品に含まれるものも含む)
- 乳製品:牛乳、チーズ、ヨーグルトなど
- 多くの加工食品:インスタント食品、レトルト食品、菓子パンなど
- 豆類:大豆、豆腐、納豆など
- (※注)パレオダイエットの定義(教義)上、豆類は除外されます。しかし、豆類はDASH食や地中海食など、健康効果が広く認められている他の食事パターンでは有益な食材と位置づけられており、豆類を一律に避けることの科学的根拠については議論があります。
食事のポイント
- 食材:できるだけ新鮮な食材を選び、旬のものを積極的に食べましょう。
- 調理方法:過度な高温調理(焦げ付きやすい揚げ物など)の頻度を減らし 、蒸す、焼く、煮るなどの調理方法も取り入れましょう。
- 食事の頻度:1日3食、規則正しく食べましょう。
- 間食:ナッツ類や果物など、自然な食品を選びましょう。
パレオダイエットに対する専門家の見解
ここまで、パレオダイエットの概要やメリットについて説明してきました。
しかし、パレオダイエットは、専門家の間でも意見が分かれているのが現状です。
パレオダイエットを支持する意見
パレオダイエットを支持する専門家は、人間の体は旧石器時代の食生活に適応しており、現代の食生活(特に農耕以降の穀物や乳製品、近年の超加工食品)は、肥満や生活習慣病などの原因になっているという「進化的不一致」の仮説(Cordain 2005, Lindeberg 2009)を提唱します。
彼らは、パレオダイエットを実践することで、これらの現代病を予防できる可能性があると述べています。
パレオダイエットに批判的な意見
一方、パレオダイエットに批判的な専門家は、栄養バランスの偏りや、長期的な影響の不明確さを指摘しています。
穀物、乳製品、さらには豆類 を完全に排除することで、必要な栄養素(後述)が不足する可能性があるという懸念も示しています。
また、旧石器時代と現代では、生活環境や食料事情が大きく異なるため、単純に当時の食生活を模倣することの是非も問われています。
長期的な効果と他の食事法との比較
近年の研究では、パレオダイエットの有効性をより客観的に評価する試みが進んでいます。
- 長期的な持続性: 短期(6ヶ月)では体重減少や代謝改善に他の食事法より優れるという報告がある一方で、2年間といった長期的な追跡では、その差が縮小する(遵守率の低下も影響)というRCT(Mellberg 2014)もあります。
- 糖代謝への影響: 2型糖尿病患者や代謝異常のある人において、HbA1cやインスリン抵抗性などの糖代謝指標を改善するかどうかについては、他の健康的な食事(地中海食や糖尿病食など)と比較して、必ずしも優位な差は認められない というメタ解析(Jamka 2020)もあり、過度な期待には注意が必要です。
パレオダイエットのリスクと注意点
パレオダイエットは、健康的な側面もありますが、いくつかリスクと注意点があります。
栄養バランス
パレオダイエットでは、穀物、特に乳製品を厳格に避けるため、カルシウムやビタミンDが不足しやすくなります。
また、乳製品やヨウ素添加塩を避けることにより、ヨウ素の摂取量が低下する懸念が実際の研究(Manousou 2018)でも示されています。ヨウ素は甲状腺ホルモンの機能に不可欠な栄養素です。
これらの栄養素を補うためには、カルシウムが豊富な小魚(骨ごと食べるもの)や一部の野菜(例:小松菜、チンゲンサイなど)を意識的に摂取する、海藻類(ヨウ素源)を取り入れる、または必要に応じてサプリメントの利用を検討するなどの工夫が求められます。
脂質プロファイルの変動
パレオダイエットは中性脂肪(TG)や血圧の短期的な改善が示唆される一方で、LDL(悪玉)コレステロール(LDL-C)の反応には個人差があり、注意が必要です。
メタ解析では平均としてLDL-Cに大きな変動がない(あるいは低下する)と報告されているもの(Sohouli 2022)もありますが、実践内容(特に飽和脂肪酸の摂取量)によっては、LDL-Cが上昇する可能性も指摘されています。特に飽和脂肪酸の多い肉類を中心に構成する場合は、開始前後で定期的に脂質プロファイル(LDL-CやApoBなど)をモニタリングすることが推奨されます。
コスト
パレオダイエットでは、肉や魚、オーガニック野菜など、質の高い食材を多く摂取するため、食費がかかりやすい傾向があります。
食費を抑えるためには、旬のものを活用したり、まとめ買いをしたりするなどの工夫が必要です。
継続
パレオダイエットは、制限が多い食事法なので、長期的に継続するのが難しい場合があります。
無理せず、自分のペースで続けることが大切です。
まとめ: 流行に流されず、自分に合った食生活を
パレオダイエットは、現代の食生活を見直すきっかけを与えてくれる、興味深い考え方です。
しかし、科学的な根拠は必ずしも十分ではなく、専門家の間でも意見が分かれています。
パレオダイエットを始めるかどうかは、メリットとデメリット、リスクと注意点を理解した上で、慎重に判断する必要があります。
健康的な食生活を送るためには、バランスの取れた食事と適度な運動が不可欠です。
パレオダイエットだけに固執するのではなく、様々な情報を参考に、自分に合った食生活を見つけることが大切です。
参考文献
[1] Cordain L, Eaton SB, Sebastian A, Mann N, Lindeberg S, Watkins BA, et al. Origins and evolution of the Western diet: health implications for the 21st century. The American Journal of Clinical Nutrition. 2005;81(2):341–354. https://doi.org/10.1093/ajcn.81.2.341
[2] Lindeberg S. Paleolithic diets as a model for prevention and treatment of Western disease. American Journal of Human Biology. 2012;24(2):110–115. https://doi.org/10.1002/ajhb.22218
[3] Jönsson T, Granfeldt Y, Ahrén B, Branell UC, Pålsson G, Hansson A, et al. Beneficial effects of a Paleolithic diet on cardiovascular risk factors in type 2 diabetes: a randomized cross-over pilot study. Cardiovascular Diabetology. 2009;8:35. https://doi.org/10.1186/1475-2840-8-35
[4] Mellberg C, Sandberg S, Ryberg M, Eriksson M, Brage S, Larsson C, et al. Long-term effects of a Palaeolithic-type diet in obese postmenopausal women: a 2-year randomized trial. European Journal of Clinical Nutrition. 2014;68(3):350–357. https://doi.org/10.1038/ejcn.2013.290
[5] Manheimer EW, van Zuuren EJ, Fedorowicz Z, Pijl H. Paleolithic nutrition for metabolic syndrome: systematic review and meta-analysis. The American Journal of Clinical Nutrition. 2015;102(4):922–932. https://doi.org/10.3945/ajcn.115.113613
[6] Manousou S, Stål M, Larsson C, Mellberg C, Lindahl B, Eggertsen R, et al. A Paleolithic-type diet results in iodine deficiency: a 2-year randomized controlled trial in obese postmenopausal women. European Journal of Clinical Nutrition. 2018;72(1):124–129. https://doi.org/10.1038/ejcn.2017.134
[7] Ghaedi E, Mohammadi M, Mohammadi H, Ramezani-Jolfaie N, Malekzadeh J, Hosseinzadeh M, et al. Effects of a Paleolithic Diet on Cardiovascular Disease Risk Factors: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Advances in Nutrition. 2019;10(4):634–646. https://doi.org/10.1093/advances/nmz007
[8] Jamka M, Kulczyński B, Juruć A, Suliburska J, Stachowska E, Skrypnik D. The Effect of the Paleolithic Diet vs. Healthy Diets on Glucose and Insulin Homeostasis: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Journal of Clinical Medicine. 2020;9(2):296. https://doi.org/10.3390/jcm9020296
[9] Sohouli MH, Fatahi S, Lari A, Lotfi M, Seifishahpar M, Găman MA, et al. The effect of paleolithic diet on glucose metabolism and lipid profile among patients with metabolic disorders: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Critical Reviews in Food Science and Nutrition. 2022;62(17):4551–4562. https://doi.org/10.1080/10408398.2021.1876625

