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ストレスは、現代社会において避けることのできないものです。仕事、人間関係、経済状況など、様々な要因で私たちは日々ストレスを感じています。そして、このストレスは、私たちのダイエットにも大きな影響を与えている可能性があります。

ストレスはダイエットの大敵?そのメカニズムを科学的に解説

ストレスがダイエットに与える影響は多岐に渡り、食欲、代謝、睡眠、さらには食行動の変化など、様々な側面からダイエットの成否を左右する可能性があります。

食欲への影響:ストレスホルモンが食欲を増進させる

ストレスを感じると、私たちの体からはコルチゾールと呼ばれるホルモンが分泌されます。コルチゾールは、血糖値を上昇させ、エネルギーを供給することで、私たちがストレスに対処できるようにサポートする役割を担っています。しかし、コルチゾールの分泌が慢性的に増加すると、食欲が増進し、体重増加につながることが示唆されています(1)。

また、ストレスは、食欲を調節するホルモンであるレプチンとグレリンにも影響を与えます。レプチンは食欲を抑えるホルモン、グレリンは食欲を増進させるホルモンですが、ストレスはレプチンの分泌を抑制し、グレリンの分泌を促進することで、食欲を増進させる可能性があります(2)。

さらに、ストレスは、脳内の報酬系にも影響を与えます。ドーパミンなどの神経伝達物質を介して、高カロリーな食品を摂取することで得られる快感を増幅させ、過食を招く可能性があります(3)。

代謝への影響:基礎代謝の低下や脂肪蓄積を招く

ストレスは、代謝にも影響を与えます。慢性的なストレスは、基礎代謝を低下させ、エネルギー消費量を減少させる可能性があります(4)。また、ストレスは、脂肪の分解を抑制し、合成を促進することで、脂肪の蓄積を促す可能性もあります(5)。

さらに、ストレスは、インスリン抵抗性を引き起こす可能性があります。インスリン抵抗性とは、インスリンが正常に働かなくなり、血糖値が上昇しやすくなる状態のことです。インスリン抵抗性は、肥満や糖尿病のリスクを高めるだけでなく、ダイエットの効率を低下させる可能性があります(6)。

睡眠への影響:睡眠不足はダイエットの妨げに

ストレスは、睡眠の質にも影響を与えます。睡眠不足は、食欲調節ホルモンであるレプチンとグレリンのバランスを崩し、食欲を増進させる可能性があります(7)。また、成長ホルモンの分泌を抑制し、脂肪の分解を阻害する可能性もあります(8)。

さらに、睡眠不足は、疲労感や倦怠感を引き起こし、活動量を低下させる可能性があります。活動量の低下は、エネルギー消費量の減少につながり、体重増加のリスクを高めます(9)。

食行動への影響:過食や偏食のリスクを高める

ストレスは、食行動にも影響を与えます。ストレスを感じると、感情を紛らわせるために、高カロリーな食品を過剰に摂取してしまうことがあります。これを情動性摂食といいます(10)。また、逆に、ストレスによって食欲不振に陥り、食事量が極端に減ってしまうこともあります。

さらに、ストレスは、食事内容の変化にもつながる可能性があります。ストレスを感じているときは、甘いものや脂っこいものなど、高カロリーな食品を好む傾向があります(11)。これらの食品は、体重増加のリスクを高めるだけでなく、栄養バランスを崩し、健康にも悪影響を与える可能性があります。

ストレスを管理し、ダイエットを成功させるために

ストレスは、ダイエットの大敵です。ストレスを効果的に管理することが、ダイエットを成功させるための重要な鍵となります。ストレスを軽減するためには、以下のような方法があります。

  • 規則正しい生活習慣を心がける
  • 十分な睡眠をとる
  • 適度な運動をする
  • リラックスできる時間を作る
  • 趣味や好きなことに没頭する
  • 信頼できる人に話を聞いてもらう
  • 自分なりのリラックス方法を実践する

また、ダイエット中は、ストレスを感じやすい状態にあります。無理な食事制限や過度な運動は、ストレスを増大させる可能性があります。自分のペースで、無理なく続けられるダイエット計画を立てることが大切です。

まとめ

ストレスは、食欲、代謝、睡眠、食行動など、様々な経路を通じてダイエットに影響を与えます。ストレスホルモンの分泌増加は食欲を増進させ、代謝を低下させ、睡眠の質を悪化させる可能性があります。また、ストレスは過食や偏食などの不適切な食行動を誘発する可能性も孕んでいます。

ダイエットを成功させるためには、ストレスを効果的に管理することが重要です。規則正しい生活習慣、十分な睡眠、適度な運動、リラクゼーションなどを心がけ、ストレスを軽減しましょう。

無理な食事制限や過度な運動は、ストレスを増大させる可能性があります。自分のペースで、無理なく続けられるダイエット計画を立て、ストレスを最小限に抑えながら、健康的なダイエットを目指しましょう。

参考文献

  1. Adam TC, Epel ES. Stress, eating and the reward system. Physiol Behav. 2007;91(4):449-58. doi:10.1016/j.physbeh.2007.04.011.
  2. Hewagalamulage SD, Lee TK, Clarke IJ, Henry BA. Stress, cortisol, and obesity: a role for cortisol responsiveness in identifying individuals prone to obesity. Domest Anim Endocrinol. 2016;56 Suppl:S112-20. doi:10.1016/j.domaniend.2016.03.004.  
  3. Yau YH, Potenza MN. Stress and eating behaviors. Minerva Endocrinol. 2013;38(3):255-67.
  4. Tomiyama AJ, Dallman MF, Epel ES. Comfort food is comforting to those most stressed: evidence of the chronic stress response network in high stress women. Psychoneuroendocrinology. 2011;36(10):1513-9. doi:10.1016/j.psyneuen.2011.04.008.  
  5. Moyer AE, Rodin J, Grilo CM, Cummings N, Larson LM, Rebuffe-Scrive M. Stress-induced cortisol response and fat distribution in women. Obes Res. 1994;2(2):255-62.  
  6. Kyrou I, Chrousos GP, Tsigos C. Stress, visceral obesity, and metabolic complications. Ann N Y Acad Sci. 2006;1083:77-110. doi:10.1196/annals.1367.013.  
  7. Spiegel K, Tasali E, Penev P, Van Cauter E. Brief communication: Sleep curtailment in healthy young men is associated with decreased leptin levels, elevated ghrelin levels, and increased hunger and appetite. Ann Intern Med. 2004;141(11):846-50.  
  8. Van Cauter E, Spiegel K, Tasali E, Leproult R. Metabolic consequences of sleep and sleep loss. Sleep Med. 2008;9 Suppl 1:S23-8. doi:10.1016/j.sleep.2007.10.011.  
  9. Patel SR, Hu FB. Short sleep duration and weight gain: a systematic review. Obesity (Silver Spring). 2008;16(3):643-53. doi:10.1038/oby.2007.118.  
  10. Macht M. How emotions affect eating: a five-way model. Appetite. 2008;50(1):1-11. doi:10.1016/j.appet.2007.07.002.
  11. Dallman MF, Pecoraro N, Akana SF, La Fleur SE, Gomez F, Houshyar H, et al. Chronic stress and obesity: a new view of “comfort food”. Proc Natl Acad Sci U S A. 2003;100(20):11696-701. doi:10.1073/pnas.1934738100.  
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